ソリューションコラム

バルクセールとは?
遊休不動産の処分方法を解説

2024/6/28
バルクセールとは?遊休不動産の処分方法を解説:イメージ

多数の不動産を保有する企業・個人の中には、処分が困難な物件を複数抱えているケースもあります。
そのような企業・個人が効率的に物件を売却する方法のひとつに、バルクセールがあります。

バルクセールとは、どのような売却方法なのでしょうか。
この記事ではバルクセールのメリットと、実際にバルクセールを行う場合の注意点を解説します。

1. バルクセールとは?

不動産のバルクセールとは、複数の不動産を一度に売却する「まとめ売り」のことで、例えば流動性の低い不動産を流動性の高い魅力的な物件と抱き合わせて効率的に売却するために行われるものです。「バルク(bulk)」には、ひとまとめにする、一括するといった意味があります。
バルクセールが普及した背景のひとつには、2008年9月のリーマンショックを発端としたサブプライムローン問題等があります。サブプライム問題が深刻な時期に、金融機関は多くの不良債権を抱えていました。通常、金融機関は不動産を担保に取って債務者に融資を行い、債務者が返済できなくなった際は担保不動産を売却して資金を回収します。しかし、競売にかけると労力や時間がかかるため、まとめ売りできて早期売却しやすいバルクセールが注目されました。

2. 流動性の高い不動産、流動性の低い不動産とは?

2-1.流動性の高い不動産の例

  • 人口が集中する都市部の駅至近に位置している店舗
  • ブランド力がある地域内の住宅
  • 再開発が進み、将来的に地域が発展することが見込まれている土地 など

2-2.流動性の低い不動産の例

  • 転用が難しい原野、山林、農地
  • 再建築ができない不動産
  • 人口が極端に減少したエリアにある老朽化した事務所 など

3. バルクセールのメリット

不動産は保有することで、さまざまなコストが発生します。例えば、固定資産税や都市計画税など保有にかかる税金以外に、建物が存していれば、維持管理費や修繕費などの費用が発生するほか、これらにかかる人的な作業負担、事務負担等が発生します。土地のみの場合でも荒れ地としないために、維持管理を行うための費用が発生します。
また、バブル崩壊後のように不動産価格が下落する局面や、現在のように物価上昇が著しい局面では、含み損や将来のキャピタルロスが発生するリスクが大きくなります。また、不動産の処分を進める局面において、不動産の保有や管理に一定の人員を割き続けることは、組織運営の効率化の妨げとなる場合もあります。とりわけ、単体では売却が困難または売却に長期間を要する流動性の低い不動産ほど、これらの将来リスクが高まります。
このように、流動性の低い不動産はさまざまな保有コストやリスクを内在しており、バルクセールによるディスカウントよりも、早期売却のメリットの方が大きいケースは多くあります。また、バルクで一括購入できる需要者は限られる一方で、資金力があり、流動性の低い不動産の利用や処分方法に長けている事業者も多いため、単体で売却するよりも高値がつくケースもあります。

4. バルクセールを活用する際の注意点

バルクセールを活用する際の注意点について解説します。

4-1.物件選定

流動性の高い魅力的な不動産は、単体で高値で売却することが可能です。売却予定物件が流動性の高い不動産だけであれば、バルクセールを考える必要はありません。バルクセールの一義的な目的は、流動性の低い不動産の早期処分であり、まず確実に処分したい物件を明確化し、それをより高値で、効果的に売却するために流動性の高い不動産をどのように組み合わせればよいかを考えていきます。いわゆる“看板物件”を組み合わせることで流動性の低い不動産の早期売却の可能性が高まります。
処分したい流動性の低い不動産の物件数、規模、処分の困難性等を考慮し、これらを確実、かつ、より高値で処分するためにどのような”看板物件”を加えればいいのか。バルクのパッケージとして魅力的でないと、買主が現れず売却できないこともあるため、慎重に物件を選定する必要があります。

4-2.物件の組み合わせ

バルクセールは単純に流動性の高い物件と流動性の低い物件を混ぜればいいというわけではなく、エリアごと、アセットタイプごとなどの一定のカテゴリーに分類してバルクセールに出すことで、高額で売却できる可能性が高まります。
バルクセールの買主は、流動性の低い不動産をリニューアル又は外部へ再販することが多いため、例えば特定のエリアの物件のみを集約して一括売却すれば、その地域に強い不動産会社なども興味を示し、特定の用途の物件を集めればその分野に強い専門業者の購入も見込めるなど、購入希望者の増加に伴う価格上昇につながりやすくなります。
需要を喚起し、より高値で売却するためにも、処分候補となる不動産の特性を吟味し、戦略的な組み合わせでバルクのパッケージを作ることが重要となります。

4-3.売却方法

バルクセールは通常、不特定多数の買主を対象としたオープンな形では行わず、指名競争入札など、情報公開先を限定して行います。複数の流動性の低い不動産をまとめて購入できる需要者はもともと限られることから公募方式で広く需要者を募る必要性が低く、また、公開することで単体の不動産を購入したい需要者が複数現れる可能性があるため情報が錯綜したり、バルクで不動産を売却することが売主のレピュテーショナルリスクに繋がる可能性もあるなど、デメリットが大きいためです。
そのため、バルクセールを行う場合は、パッケージに即した適切な需要者選定と情報が外部に漏れないための情報管理が特に重要となります。入札による売却の場合、指名競争入札として入札参加企業を限定し、守秘義務契約を締結します。また、個別に売却を打診していく場合も、同様に守秘義務契約を締結した上で、バルクセールの情報を公開していくなど、情報管理を徹底することが重要となります。

4-4.依頼先

上記の通り、バルクセールは物件選定、組み合わせ、売却方法などを戦略的に行うことで、流動性の低い不動産の処分可能性が高まり、より高値で売却することも可能となるため、法人仲介に強く、バルクセールの経験豊富な不動産会社へ依頼することがお勧めです。
法人仲介に強い不動産会社は、買主候補となる企業とのコネクションが豊富なため、クローズドマーケットでも最適な買主を見つけることができ、また、自らも流動性の低い不動産の活用や売却に長けているため、バルク化しづらい物件の処分方法なども含めて、戦略的な対応が可能となるためです。
また、鑑定部門がある不動産会社であれば、バルクセールに出す全ての物件を評価・分析することで、市場価格と比較しながら、戦略的な活用方法などの助言を受けることも可能となります。

まとめ

以上、バルクセールについて解説してきました。

バルクセールは、複数の物件をセットで売却することにより、得られるメリットが単独の物件をディスカウントして売却するケースを上回る場合に用いられます。
そのためには、物件の選定、組み合わせ、売却方法、依頼先に留意し、流動性の低い不動産の抱える「コスト負担」や「処分難易度」などのマイナス面の解消につながる流動性の高い不動産を組み合わせることで、売却の可能性を高めることが重要です。
処分困難な流動性の低い不動産を保有の方は、一度バルクセールを考えてみることをお勧めします。

竹内英二
不動産鑑定士・中小企業診断士
不動産鑑定事務所である株式会社グロープロフィットの代表取締役。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。土地活用と賃貸借の分野が得意。